12. vs スラム零番街

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「遠隔操作か!?いつ仕掛けた!吐け!」

「お、オ、オイラだって知らねぇよ!つかオイラよりさきにあのオーガ疑おうぜ!?」

頭をぐらぐらされながらとぼけてはみたものの、志斗の中では拍手喝采だった。
出来そこないの実験体でも、やはり主人の役には立つものなのである。それがモルモットの殊勝な習性なのだ。
ゴールデンバットが飛び立てなければ、少なくとも強盗は重機系を運ぶのは不可能だ。
逃げるだけならズタ袋に詰め込めるだけ詰めて逃亡するしかないが
現場にはオーガと何より証拠がででんと居座ってしまっているので
大変に不利な状況だ。
結果的に全員を足止めした今。りゅーはゆっくりと彼らを調理すれば良い。
志斗は揺さぶられることより何より
大笑いしたくなるのを堪えるほうが必死だった。

「…クソが!」

聞いても無駄だと悟ったのか、チューヅは志斗から降り、
自分でも運べそうな機材を取りにかかった。
道程で、ドリルを抱えて走っていくジャスタスとすれ違う。

「おい、何すんだよ!」

「装甲を一枚剥がすだけだ」

その言葉にチューヅがあわてたのも無理はない。
ゴールデンバットは技術者の志斗にも見くびられないよう、見た目にも相当気を使ったロボットだ。
本物のヴォルグさながらの美しい流線型には手間暇かかっているし
金メッキがはがれないよう、細心の注意を払ってコーティング剤を4層に塗った。
それが、あんなドリルなんかで削ったら…考えだけで、チューヅは半分泣きそうだ。

「馬鹿いえ!俺がどんだけ苦労して作ったロボだと思ってんだ!
 中に居んのはえんまだぜ!?何も起こりゃしねぇよ!」

「じゃあ何で扉を閉めるんだ!絶対誰かに唆されたに違いない。
 ロボの主導権を取り戻すのが先だ。いつ飛び立たれんともわからんぞ」

チューヅがドリルにすがりつくせいで、ジャスタスは解体を強行するわけにもいかない。
ふたりが言い争っている間、志斗は小さな声で名前を呼ばれるのを耳にし
物陰からちょいちょいと招く手のほうに徐々に後ずさりしていく。

「じゃあ、じゃあ、背面部分の一枚だけだぞ?
 六角形の上下左右を突けば簡単に外れるようになってっかんな、
 それ以外を削りやがったらマジぶっ殺す」

「妥協してやるだけありがたいと思えよ。
 君は今のうちに志斗と一緒に積み荷を纏めておくんだわかったな」

しかし、そう長く言い争っている場合でないのはふたりの強盗もわかっているらしく
驚異的な速度で妥協点は見つかっていた。
苦々しげに視線を交わすと、双方、目的としている方向へ走り去る。
チューヅは一言発破をかけると、

「待たせやがったら承知しねぇぞバーカ!
 …っしゃぁ、志斗!そーゆーことだからさっさと時限装置にエーテルカウンターを…ぁあ?」

振り向き、そして、絶句した。
さっきまで腰を抜かしてふるえあがっていた志斗の姿は、どこにも無くなっていたのだ。
器具しか積まれていない食器棚。湿気った木箱の中にどっさりと機械ゴミが詰めてあるものの影にも
あの枯れ葉色の体は見当たらない。
チューヅのガスマスクに覆われた顔が、下から段々と熱を帯びて赤くなっていく。

「て、て、てめぇー!出てきやがれぶっ殺す!」

しかし、ぶっ殺すとまで言われて出ていく志斗ではないのだ。