「はいはい静粛に静粛に!今は道具の調達について話す時間!
ぱっぱと終わらせぱっぱと休もう。いいな!」
ギュニア杯の熱も冷め、ひととおりの騒動も終わり
平和な日々が戻ってくるかと思いきや、そんなことはチームスラバヤが許さない。
ジャスタスが両手を叩き、暑さに軽くバテながら胡坐のリーダーの注意を向ける。
土いじりに必死のえんまにはこの際、何を言っても無駄だろう。
というわけで、平和を乱すべくの画策は着々と進められていた。
フルメンバーではないが、チームスラバヤが作戦会議を行うのも久し振りである。
「先ほども言ったとおり、やっとGLLのと連絡がついた。
ギュニア杯のトロフィーは、何度も奪おうとしたらしいんだが
悉く返り討ちにあい、昨日とうとうチャンピオン一行の出園を確認したとのこと」
さて、どうしたものか、とジャスタスは首をひねった。
そもそも、彼らがギュニア杯のトロフィーを狙っていた理由として
名を上げる以外にもうひとつ、機材調達に有利であるというのがある。
ギュニア杯ほどの大会ともなれば、当然出場者は相当の手慣れである。
出場資格である予選突破の証を見せれば、武器屋や機械屋も悪い顔はできない。
スラバヤはこう踏んでいた。
運営に楯突くための装備くらい、ホイホイチョロリといったところだろう、と…
「ほんっと使えねぇ蜘蛛女だぜ!」
「おっと、ドルテの悪口はそこまでだ」
「チャンピオンと2番目のチャンピオンを、いっしょに相手したんだろ?
すごいなあ、そりゃあ、まけちゃうのも、わかるよ」
ところが現実はそう甘いものでもなく、
流石はギュニア杯。予選では見事ボロリと負け、
ではチャンピオンから奪おうと試みたところがこの有様だ。
ドルテを布石として投げこむことはできたものの、他に収穫がないというのはあまりに痛い。
「そもそもよ、そんな複雑な機器がGLL城乗っ取りに必要なのか?ぶっつけじゃダメなのかよ」
ガスマスクの上からでも唇のとがっているのが見えるような風でチューヅが口をはさんだ。
予定として調達したいのは、ざっと見ても解錠機にリンクカッター。
爆弾、妨害電波発生器…
「あのなぁ、自分が何するつもりか解ってんのか。相手はGLLだぞ?
相当な技術でかかる必要があるし、君の技術じゃ悪いがせいぜいコケ脅しがいいとこだ。
で、機材に頼る必要があるんだが、こういうのは大抵テロとかに使われるもんなの。
足なんか誰も付けたかないから、誰も協力してくれないわけ。
手に入れるには正当な理由がないと難しいんだよ。
生憎僕らにはそれが無い。名目が現実離れしすぎてる」
「お前が正当な理由なんか持ってたことあったかよ?」
言い訳をチューヅは鼻で一蹴し、胡座から後ろに手を突くと、
かぼちゃの芽のご機嫌とりに忙しい相棒を振り向く。
「えんま、夏祭りでよ、屋台出してた花火のこと覚えてるか」
いきなり声をかけられ、えんまは眩しそうにチューヅを見上げ
少し思い出すのに懸命になった後「うん」と答えた。
「おぼえてるよ。チューが作ってもらったやつだろ。『世界征服』って」
場所はリヴリーアイランド、近場の神社の夏祭り。
屋台の並ぶ境内を、花火屋めがけてチューヅは走った。
祭りがすべて終わった後の、人気のない夜空に
数月後の悪夢を幕開けてやるためだ。
『世 界 征 服』
その四文字は、真黒の夜空にしっかり刻印を残した――
あの誇り高い瞬間を再び脳裏にリプレイし、感動にふるえるチューヅを尻目に
えんまは再び、草むしりに戻った。
この様子だと、どうやらカボチャの生育は順調らしい。
そんなことより、だ。
平和な様子をひとしきりみやって、チューヅは声を低め、言った。
「アイツで確かなんだな、その志斗って技術者は」
ジャスタスは黙っていたが、不穏な笑みが静かに同意した。
「売れねぇってんなら力づくで奪うまでだぜ」
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