07. vs 幸江

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「やぁ幸江さんじゃあないか。こんなところで何してんだね。」

「あ、八百屋さんこんにちは。
 ちょっと穴に落ちちゃって。」

穴の中を覗き込み、真っ暗な中でにこにこしている幸江を見つけたのは
3サーバーで八百屋を営んでいる
緑のマウンテンピグミー、人呼んで主婦と主夫の友だ。
ちょうど幸江の身長ぶんだけ掘られた
幸江を落とす専用としか思えない落とし穴から
やたら大量の荷物と一緒に、幸江をよいしょと持ち上げてやる。

「ふぅー、ありがとう。助かったよ。」

「いやいや幸江さんにはいつも贔屓にしてもらってるからさぁ。
 しかし大丈夫かい。なんでこんなとこに深い穴があるんだか。」

「うーん、なんでだろう。今日は何回も落ちたんだよね。
 穴掘り大会でもあったのかな…」

「気をつけなよ、幸江さん、人がいいんだからさぁ…」

両手が一杯の幸江のかわりにパンパンと服の泥を落としてやってから
八百屋は手を振り振り立ち去っていく。

その様子を物陰から見ている目が二対。

「幸江さんすごいなあ、またおとしあなからでてきちゃった。」

「やべぇよやべぇよやっべぇよ…あいつ只の主夫じゃねーじゃん
 何なんだよ全然トラップきかねぇしよ!」

餌屋に居たときからずっと幸江に張り付いていた、
あのハナアルキとオーガである。
穴、もといダミーのリンクやら強制転送やら、
あらゆる手を使って幸江を足止めしようとがんばっているのだが
うまくいったと思うたびに誰かが幸江を手助けするので
全く効果はあがっていない。

「ったく、恨むぜ姉御の野郎…」

姉御というのは例のカンボジャクのことだ。
今は幸江に背負われて、くったりと眠っている。
まったく暢気なものだ。ハナアルキは毒づいてslingしてみる。
しかし慌てているせいだろうか、彼女の頭を狙った石は
狙いが狂って幸江の頭に当たった。

「あ、こっちみてる。こんにちはー」

「ばか!隠れろ!」

幸江と目が合ったので、オーガはにっこり微笑んだ。
すると幸江も微笑に会釈をつけて返す。
てくてくと歩いていく幸江の後姿を見送っていくオーガをこつんと小突いて
ハナアルキが紙ヒコーキを渡してきた。

「蜘蛛女当てにコレ送るぜ。」

そこにはこう書かれている。

    \(^o^)/