ギュニア杯3日目午前:ちゅたろう vs 黒鋼刃

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グラウンドに現れた黒鋼刃に、いきなり相手は襲い掛かってきた。

「…うわっ!」

ゴングの鳴る前である。不意をつかれた黒鋼刃は守るのが精一杯で
咄嗟に銃を握った両の前腕で頭をガードする。
それから身を引こうとしたところまでが襲われる前にできた精一杯の動作で
大柄な体格が斜め上から突っ込んできて、ものすごい力で固められる。
動けない。
反則だ、とか卑怯だ、とかいう前になんとか対抗しなくてはいけない黒鋼刃は
持ち上げた銃の尻で頭を殴ってやろうと、動かない肘を目いっぱい動かした。

そのときだ、彼女の耳元で相手が大声で叫びだしたのは。

「わー、嬉っしーなぁあ!」

「は、ぁ?」

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赤コーナー:
ちゅたろう カンボジャク
身長182cm 体重68s
vs
青コーナー:
黒鋼刃 プリミティブブラックドッグ
身長175cm 体重70kg 
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「夢みてーだ!ちょー嬉しい、やるき満々!
 お前…じゃねえや、お前とか言ったら失礼だもんなっ
 俺、たまたま黒鋼刃の初日の試合みててさ、すっげーカッコよくてよーっ
 ぜってー勝ち上がるだろうなと思ったから、対戦するために頑張って勝ち上がってきたんだ!
 でもよ、こんな早く叶ってくれる願いだとは思わなかったーっ!
 あっ、俺ちゅたろう!今めちゃくちゃ幸せーっ!」

ちゅたろうと名乗った相手は、黒鋼刃の至近距離でにかっと満面の笑みを浮かべて見せた。
まっすぐな笑みからは一瞬想像しにくいが、大きな口は紛れも無くカンボジャクのそれで
しっかりした体格、明るいグレーで纏められた動きやすそうな服装から
それなりの格闘派だと見受けられはするものの
甘いイチゴ色をした髪の毛が、彼の気さくな性格全てを物語っている。
絶え間なく話し続ける目の前の男にぎゅうっと抱きすくめられたまま
当の黒鋼刃は目を白黒させて、そんなことを考える。
それ以外に反応の仕方なんて、すぐには思いつかないだろう。

「あ、わ、あの、褒めていただけて光栄で
「もお、俺とお前を引き合わしてくれた審判さんにも、運命にもめっちゃ感謝してるよ。
 おっちゃん、フランスとかいったっけ?ありがとなっ!」

おたおたと困り顔の黒鋼刃を抱いてルンタッタと回りながら、
ちゅたろうはフランツに向かってもとびきりのスマイルを飛ばす。
フランツは冷ややかにふたりを一瞥し、腕時計に目をやると
名前の訂正もせず

「…位置についたら、試合開始。」

と、静かに告げた。