05. vsサイエンスレジェンド

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「いやぁ、ありがとうございました。
 ようやっと助かって、一時はどうなることかと…」

半ば興奮しているのか、なかなら礼を言い終われないバンブゥの話を
にこやかに聞いているように見えながら
すぎくの頭は全く違うことを考えていた。

(はてさて、私のペットはどこへ逃げたのやら…)

崩壊したメカニクローンの中に、パイロットの姿は見当たらなかった。
脱出ポッドが飛び出した様子もなく、
爆発までの間にほとんど時間はなかったはずで、
白昼金縛りにあっていた彼が出口まで動けるはずもない。
第一、ケチが高じて損をする性格のジャスタスが
巨費を投じたロボットを捨てるなど、ありえるだろうか?

(誰かの助けでも借りたのかも。)

「…僕がこうやって働いていられるのもサイエンスレジェンドさんのお陰ですよ。
 いやぁ本当に感謝してます。本当に…」

バンブゥの話はまだまだ終わりそうにない。 





「まにあったあ〜…」

宝くじ販売所。
幸いシーズンを外した今は店も閉まり、人気も少ないそこに
一匹の巨大なオーガがもつれ込むように移動してきた。
薄紫の髪の毛はもしゃもしゃで、煤にまみれて見る影もない。
うつ伏せに倒れ、荒い息を吐く。

「…きゅう。」

「わ、ごめん、ごめん。」

オーガが慌てて体を起こすと、彼の腕の中から
半ば潰れた坊主頭のピグミークローンが這い出る。
飛んできたえんまがジャスタスを掻っ攫って
ワープしてくれたから助かった命が
彼の体の下で窒息してしまっては元も子もない。

「だいじょぶかい?こんなに汗ぐっしょり。怪我はない?」

えんまの問いにぶんぶん首を振るだけ振ると、
ジャスタスは肩を抱いてその場にへたり込んだ。
震えが治まらない。
大きくていかつい手が背中を撫でてくれるのを感じる。
背骨に沿って添えられた温かさに押し出されるようにして
出すつもりも無かった声が漏れた。

「怖、かったんだ…」

「いいんだよ、そんなこと。
 すぎくくんが、いるだなんて、知らなかったんだからさ。
 つぎはまけないように、なんか考えてよ。」

うっかり零れ落ちた本音は、強請られる材料になるわけでもなく、
嘲笑の種になるわけでもなく、ジャスタスははじめてえんまに申し訳ない気持ちになった。
全てを投げ打って懺悔してしまいたいと思う一方で、
償いなんてしてなるものか、何が悪いのかと、
犯した功罪の背負いきれない重さに耐えられる気がしない。
そんな自分がひどく惨めな気がする。

「さ、行こう。」

肩を支えようと入ってくる腕に縋りついて

「もう少し、ここに居たい。」

一層小さく体を丸めても、えんまは小さく頷いただけだった。