「な、ななななんじゃそら!聞いてねぇぞ!」
「教えてもいねぇぞ☆」
白いシルクハットに虹色の体躯を持ったジュラファントは
可愛い形とは裏腹の重い体重で、どんとボンネットに飛び乗った。
ポンコツとしか言い様のないチューヅの乗り物は
ものすごい勢いで前方に傾ぐ。
「ばっ!負けちまうじゃねえかよ、こん畜生っ」
「手加減ナシでいこうね〜!そぉれマジカルハンマー!」
牙のような手に持ったステッキを、巨大なリボンのついた3トンハンマーに変え、
力いっぱい振り下ろす。
補助席の屋根がぽっかりと丸く抜け、下のほうでは小さな爆発まで起こった。
ひぃっと声を上げてちぢこまるチューヅに容赦なく、第二撃が降り注ぐ。
どのあたりがマジカルなのかはともかくとして、言葉にたがわず手加減がない。
早速かなりボロボロになったノーズウォーカーの
その時。
「きゃあ!」
ジュジュが落ちた。
ものすごい力で尻尾を引っ張られたような感覚と共に、真後ろにひっくりかえって背中を打つ。
「♪いーれーて」
戦いの場にそぐわない、遊びに混ざりたがる子供のような節が、
仰向けのジュジュを、穏やかな白い目――尻尾を引き摺り下ろした張本人が覗き込んでいた。
そのオーガははにかんだように微笑むと、ノーズウォーカーの助手席に目を移した。
「ねぇ、チュー。そこにいるんだろ?
あのねぇ、チューがきのう色々ゆってたじゃないか。
で、そうゆうのを聞いてね、ぼく考えたんだけど、その…」
一言一言、記憶の糸を手繰ろうとするように。
彼はゆったりとしたペースで喋り続ける。
「チューがGLLを乗っ取りたいってゆうんなら、やっぱりぼくはチューの相棒だから、さ。
ぼくもいっしょにやったほうがいいんじゃないかなぁって、思ったんだ。
だから、いっしょにやろ?いいよね」
スピーカーはしばらく黙っていた。奥から鼻をすするような音が少し、した。
「…えんま」
「うん」
ややあって、押し殺したようなぶっきらぼうな声がオーガの名を呼び
えんまは特に気分を害した様子でもなく、平然と答える。
「手始めに、その女を、ぶっ飛ばせ!」
ジュジュの頭にかかと落としが入ったのは、その直後だった。
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