01. vs 魔女っ娘 樹樹

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ある島で、ひとり震えているハナアルキがあった。 狭苦しく、薄暗いそこは夏の熱気がむんと立ち込める場所だ。 二本の脚が、いや鼻が、がくがく震えて止まないのは、武者震いなのか、それとも。 (男に二言はねぇんだ…) こんなことになってしまったのは、仕方の無いことだったのだ。 ヤケになり、悪に走る彼を誰も止めては……くれたのだけれど、 馬鹿にされて黙っていられない彼の性格が止まることを許さなかったのだ。 はじめの小さな見得が雪だるまのように転がっちゃ膨らんで 彼をそそのかし、根拠のない無謀に走らせている。 汗が背を伝い頭に落ちていく。 ハナアルキはワープボタンに手をかけ、姿を消した。 GLL門入り口の前の賑やかな喧騒を打ち破ったのは いきなりの不可解な地鳴りで。 敏感なクンパ達の耳が動き、他のリヴリーもきょろきょろとあたりを見回したころ どん!と轟音を立ててやってきたのは何かと思えば、 そこには巨大な…巨大、な…何か。 「やい!セレブリティ気取りのべらぼうども!  鼻ぁかっぽじってよっく聞けぃ!」 錆びたトラックの下に脚の生えたような、しかも竿竹らしきものが大量にくっついた上、 最上部には何故かやかんまで突き刺さっているという意味不明物体は自分の身分を名乗ろうともしない。 ムダに威勢に長けた声が力いっぱいハウりつつ宣言している。 「下がりなちゃい!何でちゅかお前…っていうか、その…」 門を守るケマリ――ビブがホイッスルを吹き鳴らしつつ出てきて、足(らしきもの)の前に立ちふさがった。 4m上に声を全開に張り上げると、こてんと後ろに倒れてしまう無力な彼だ。 野次馬達に支えられながら、ビブは上を仰ぐと一端言葉を探し、 「……粗大ゴミ、でちゅか?」 「違ぇよ!俺様ってば空前絶後のハナアルキ型巨大ロボ!  ノーズウォーカー様でぇぃ!」 ピー!頭上のやかんが湯気をふいた。どうやらこれは怒りを示すためだけに乗っているようだ。 イマイチ決まらない、しかも意図の全く伝わってこないものに戸惑いを隠せない民衆達。 その中から人ごみを掻き分け、シルクハットにリボンでキメた一頭のジュラファントが出てまいった。 「コラコラ!だめよう、おちびがおちびを苛めて!」 空気が二度ほど下がったのは言うまでもないが、それはともかく 彼女はポーズを決めて曰く。 「悪い子は死刑だゾ☆」 近所でもいろんな意味で有名な、自称魔女っ子ジュジュの登場だ。 「常連のお嬢じゃないでちか…よらないでくだちゃい。危ないでちゅよ、多分」 「下がって、ビブちん。知り合いなの」 ビブを牙で制し、彼女は上に向かってよく通る声を響かせる。 「やっほーチューヅちゃぁん!  GLL城を乗っ取るー☆とか言ってたアレ、正気だったのねえ、お姉さんびっくらこいちゃった!」 「あ、あたぼうよ!  てめぇらがいけねぇんだ!GLL入りしてねぇからって、俺んとこバカにしやがって!  GLLなんてな、入りたくて入れるもんじゃねんだぞバカヤロー!」 平民の嫉妬、剥き出し。 ジュジュは妙にアメリカンな仕草で溜息をつき、息を吸い込んで再び 「お姉さんの指名はね、GLLの平和を守ることなのー!  チューヅちゃんといえど邪魔をするなら見過ごすわけにはいかないわ」 「へっ!女だてらに気丈じゃねえか!  魔女っ子なんて口だけ野郎の癖によ!何かできるならやってみろぃ!」 ところで、プライドの高い存在にとって いわゆるバカにする系のことは禁句にあたるわけである。 「…公衆の面前での変身は規則に反するのだけどね…」 で、あるからして、チューヅの言はそういう意味では非常に効果的だったわけであるが 「いいわよ、特別に魅せてアゲル!」 何しろ相手が悪すぎた。 とか言ってるうちにも、ミラクルな光が迸る。 虹色のリヴリーなんて本来ありえない。 ありえないのだがあるとすれば――本物の奇跡を起こす力のせい。 「マジカルジュラシックエレファント、マキアージュ、見参!」 魔女っ子なのは、マジだった。