…vsジャスタス
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試合前01.
試合前02.
01.
02.
03.
04.
「ヘイ、次はダリンデショ?相手はダレの?」
ジャスタスが次の戦いを控え、ドルテとえんまは一足先に観戦できる場所に待機していた。
音も聞こえず視界は劣るが人の少ない、安全な場所だ。
大好きなジャスタスの試合と聞いて興奮しているのだろう。
ドルテはさっきから落ち着かず、
廊下の覗き窓によじのぼり、ガラスに顔を押し付けている。
本当ならグラウンドギリギリまで出て行って大声で名前を呼びたいところだが、
彼女は不法侵入の身なので大人しくしているしかない。
勢い良くシェイクを啜って、えんまを見上げた。
「えーっと…まっててね、あそこにかいてあるんだ、ジャ・ス・タ・ス、ぶいえす…」
グラウンドの右と左から、ふたりの選手が入場してくるのが見える。
ジャスタスと見える黒い姿。
相手の姿を認めると一旦足を止め、ぎこちなく歩きはじめる。
反対側から歩いてくるイッカクフェレルは自信があるのか、細身の肩に怒りのオーラを漲らせていた。
その姿に、先を続けようとしたえんまの唇が凍りつく。
「エーンーマ!早く教えろ!」
グラウンドを見つめたまま静止してしまった彼を、ドルテが小声で急かす。
えんまはその声が聞こえたのか聞こえていないのか、
独り言のように
「…チュータツ、さん?」
素っ頓狂な声を上げた。
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赤コーナー:
チュータツ イッカクフェレル
178cm 体重:61kg
vs
青コーナー:
ジャスタス ピグミークローン
177cm体重58kg
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カツカツとブーツの音。裾の爛れた、一張羅の白衣。
くすんだ渋色の髪を後ろに流したイッカクフェレルを前にして、ジャスタスの気分はどん底まで下がっていた。
試合に間に合わず、不戦敗になってくれていたらどんなに良かったことだろう。
…本当なら試合前、憂鬱なことなんかじゃなくて
この相手とあたってしまったことをチューヅに相談したかったのだ。
しかし、上手く切り出せなかった。
『だからお前は駄目なんだ』
ネガティブな事ばかりを繰り返す『声』が頭の中に響く。
誰だかわからなかったその声は、いつしかイグジスのそれになっていた。
その声を掻き消すように、ジャスタスは引きつった声で言った。
「…何故、君がここに居るんだね。」
「意外な事では無かろう。」
ゆっくりと投げられた問いに、
イッカクフェレルは、ふん、と鼻を鳴らして答える。
褐色の肌。薄い唇に残忍な色が濃い。
「ここで戦うのも縁やも知れないな。
何れ、貴サマを潰してやらねばと思っていた折だよ。」
君。貴サマ。
慣れた呼び名から察するとおり、彼とジャスタスは知り合い同士だった。
ジャスタスは乾いた笑いを漏らし、目を泳がせる。
自慢ではないが、何人もの知人を手に掛けてきたジャスタスにとって
知り合いを痛めつけることなど、何の葛藤も無いことだ。
そもそも、チュータツと彼はただの知人に過ぎず…いや、ジャスタスにしてみれば
自分よりもインテリで、尊大な態度を崩さないチュータツは劣等感を刺激される存在であり
そのプライドを踏みにじってやりたいだとか、三十回くらい土下座させてみたいだとか
笑顔の裏でそんな感情をくすぶらせていた、少々疎ましい存在だったのは確かだ。
だからむしろ今は、日頃の鬱憤を晴らす願っても無いチャンスで
悩むとすれば、血祭りに上げようか、火達磨にしてやろうか。
その二択をうきうきと弄んでいた、筈だった。
「えんま君を監督してくれた礼に…な。」
だがチュータツがえんまの親友だとすれば、話は違う。
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