ギュニア杯2日目午後:スウィーティー vs 黒鋼刃

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グラウンドに転がり込むと、黒鋼刃は立ち止まる。
彼女のいるはずの青コーナーの立ち位置には一匹のクロメが、
片足に体重の片寄ったラフな姿勢で立っていたのだ。
遅い黒鋼刃に痺れをきらし
フランツは次の試合を始めてしまったのだろうか。

「50秒の遅刻。」

フランツは頭上に浮かべたchimeを見上げると、

「あと10秒で失格でした。位置について下さい。」

まだ時間があったことにほっと顔を綻ばせ、黒鋼刃はラインに近寄るとクロメに声を掛ける。

「良かった…恐れ入りますが、そこは私の場所です。」

「オヤ。そうなのカイ?」

振り返ったクロメは如何にも驚いた、というように両手を軽く挙げてみせる。
目は前髪に隠れて見えないが、三日月形につり上がった口元が印象的だ。

「先程わたくしからも注意申し上げましたがね。
 スウィーティー選手。」

フランツが冷たく横槍を入れる。

「失敬!キンチョウのあまり、
 ついやらかしてしまったようだ。」

スウィーティーはコツンと額を叩くと、
踊るような足取りで後ずさり、自分のラインに戻る。
人の良い黒鋼刃は、彼が本心からそう振る舞っているのだと信じて疑わなかった。

「さぁ、役者もそろったコトだ。ハジメヨウか?」

まるで自分が仕切っているみたいな口振りで、スウィーティーは指を鳴らした。
フランツは彼を一瞥したが、何ら心を動かされなかった様子で職務に戻る。

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赤コーナー:
スウィーティー クロメ
身長:180cm 体重:56s
vs
青コーナー:
黒鋼刃 プリミティブブラックドッグ
身長175cm 体重70kg 
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「ヨロシク頼むよ。」

スウィーティーは動じた様子でもなく、優雅にお辞儀をして見せた。
後ろでひとつに括った明るいかぼちゃ色の髪が動きに釣られて前に垂れる。

「こちらこそ、宜しくお願いいたします。」

黒鋼刃も応じながら、懐から小型の護身用拳銃を取り出して
真っ直ぐ彼に突きつける。

「ヘェ、キミは拳銃をツカウんだね。
 セッカク機敏そうないいカラダをしてるのに
 ドウグに頼ってしまうのはモッタイナイ気もするけれど。」

黒鋼刃は一瞬、愛しそうに目の前の銃に目をやる。

「銃は私の友人です。この子なしの戦いなど味気ないだけです。」

「フフッ、アイジョウを傾けるのはイイことだ。」

スウィーティーは小さく笑うと、攻撃を仕掛けようと構えなおした黒鋼刃を余所に
さらに言葉を続ける。

「だとするならば、私のトモダチもショウカイしておこう。
 ダーツナイフ。私も投擲がトクイでね。タクサン持っているよ。
 ご覧、一度に5本投げるコトができる。」

いつの間にやら右手の指の間に挟んだナイフを
観客にも見えるように高々と掲げて見せた。
凝った装飾のフリルに覆われたシャツの胸元に相まって
他愛無い遊戯に耽る貴族のようだ。

「それ以上手の内を明かさないほうが良いのではないですか。」

純粋な善意から、黒鋼刃がスウィーティーの言葉を遮った。

「これ以上話しても、貴方が不利になるだけです。
 早く戦いましょう。」

もう一度真剣な表情で、黒鋼刃は銃を構えなおした。
いつでも踏み切れるように、利き足に力を込める。

「ジャマしてしまったかな?これは失敬。
 どこからでもかかってオイデ。」

スウィーティーは何の構えも取らず、斜に構えて立ち続けていた。
その顔ににやにや笑いは張り付いたままだ。