ギュニア杯2日目午前:イグジス vs ジャスタス
イグジスが首を少しだけかしげると、
その真横を電撃が掠めていった。
側転を打てば、その後を一歩遅れて/slingの跡が追っていく。
ジャスタスの技の軌道は完璧に読まれていて、
繰り出す前の動きで既に避けられてしまっていた。
さっきまでの物憂さはどこへ行ったのだろう。
舞い散る羽毛のような身軽さで跳ね回る。
見る、というよりも気配を感じて、すれすれのところで避ける。
最初こそ撹乱重視の戦い方をしていたジャスタスだったが
あまりの当たらなさに苛ついているのだろうか。
見当違いの八つ当たりをやらかしているような、
どこか焦りを感じる戦いぶりだ。
「小賢しい…っ」
とうとう五度目の/thunderをかわされて、歯の奥でぎりりと毒づく。
「だが、これは避けられるかな!/wind!」
ジャスタスはいったん引くと、
/torchを重ねた直後に、それを吹き消さんばかりの勢いで風を起こす。
熱風が渦を巻いて、増幅された大きさで襲い掛かる。
直撃すれば勿論のこと、掠ったとしてもダメージがあるだろう。
「/freeze。」
イグジスは脚を開いて地面にぺたりと伏せると
自分の周囲の水蒸気を冷凍して熱気から身を守る。
頭上を熱風が通り過ぎた後、なんなく立ち直り、体の埃を払った。
「素人にしては考えたんじゃない?
だけど、頭で戦ってちゃ俺には当てられないよ。」
悔しそうに動きを止めたジャスタスの傍にとんと宙返りを打つと
体を反転させて膝蹴りを見舞う。
ジャスタスは一瞬反応が遅れ、まともに食らった。
顎を叩くこともできたのだが、彼が遊びたい意向ゆえに、急所は外す。
「手助けしてやろうか。」
蹴った相手の体が宙にあり、受身を取る前に唱える。
「/dark」
ふつりと日光が遮られ、辺りが真っ暗になる。
無防備なまま地面に衝突したらしく、悲痛な呻き声と倒れる鈍い音が聞こえた。
「これで、余計なこと考えて済むだろ。」
笑いを噛み殺しながら、イグジスが穏やかに話しかける。
彼ははっきりとは見ていないが、
屈辱のどん底にあるジャスタスの心理は手に取るように分かった。
「莫迦め…自分だって見えなくなってどうする。」
流石に全身を打った後でまともに喋れる訳はなく、苦しそうな声音が吐き捨てた。
イグジスは思わず声を出してしまいそうになりながら
「お生憎様だけど、俺は暗闇は得意なんだよね。」
呟き、閉じていた目を開く。
彼の得意とする光の少ない世界が、目の前に広がった。
BACK