ギュニア杯2日目午前:イグジス vs ジャスタス
「…来なよ。」
イグジスが面倒くさそうに手で促すと
ジャスタスは無言で/bigshockを放ってきた。
真正面から、勢いよく。やはり魔法の使い手だ。
しかしどう頑張っても一直線にしか出せないクラッカーはすぐに見切られる。
イグジスは右足を軸に、今までの緩慢な動作からは想像できない俊敏さでかわすと
そのまま下から抉るように蹴りを繰り出した。顎を狙う。
「…つまらないな。」
率直に思った。これは初戦と同じ展開だ。顎に一撃、それで終わり。
しかし、足先に顎の砕ける手応えがないことに気づき、眉を顰める。
実際彼は僅かに狙いを外していた。
クラッカーのテープや紙吹雪が邪魔をして、ジャスタスの位置の把握を妨げている。
「…へぇ。」
では、さっきのクラッカーは攻撃ではなく、防御のために出したのだろうか。
イグジスはくつ、と喉を鳴らした。
「…アンタ、もしかして昨日の俺の試合見てた?」
「お見事だったよ。だが、同じ手は食わん。」
間違いなかった。
ジャスタスは昨日、イグジスの戦いを見ており、その上で今の攻撃を避けた。
初日は一番試合の多い日だ。
全部の試合を見きれるわけがない上、把握する内容も多く
第一、初戦から本気を出す選手は少ないから収穫も少ない。
それを承知の上で試合を見ていたというのなら
よほど記憶力に自信があるか馬鹿正直かのどちらかだろう。
まぁ、結果的にジャスタスは試合の内容を把握していたイグジスと当たり
知識のお陰で一撃防いだわけで、努力は徒労では無かったというわけだ。
「…よっぽど勝ちたいみたいだねえ。」
50%の賞賛と侮蔑を込めて、イグジスは口にする。
ジャスタスは表情には出さなかったが、少し勘に障ったようだ。
「必死になってくれるのは構わないよ…
俺は君が足掻いてくれればくれるだけ楽しめるんだから。
手加減はしてやるから全力で来な?相手してやってもいいよ。」
「そこまで言うなら望み通りにしてやるさ…今の言葉、後悔するがいい!」
イグジスは、ジャスタスの一言一句を味わうように目を瞑った。
冷静を装おうとはしているが、プライドが著しく傷つけられたらしいのは
声を聞けば傍目にも明らかだ。
ごう、と風が舞い、/stormがふたつ、独楽のような動きでイグジスを挟み撃とうと襲う。
「…長く遊ぼうか。」
彼は初めて口元を吊り上げると、目をつぶったままで
軽々とそれらを避けた。
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