04. vs 毒飴

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「おばか。」


「お馬鹿とは何だ!」
「これをお馬鹿といわずして何といえと言いますかね。」
バニヤンツリーの浜辺で、チューヅが怒っていた。リラは櫂に顎を乗っけて彼を
せせら笑っていた。ひっくり返した傘を浜に浮かべて舟がわりに乗っている。
「聞いてますよ、GLL門での一件。一時はすごく笑い話になったんですがね、
 既に忘れ去られつつある。一発屋の典型って感じかしら」

まじかよ!と叫ぶチューヅ。まじである。

「ちっきしょう民草めが!笑ってられんのも今のうちでぃ、
 GLL城のてっぺんから火炎放射してやるぜ!」

ひとしきり怒った後、ぐいと拳を握りしめ。

「な!」

同意を求めて顔を上げた。

「『な!』って…私に言われましても」

反応は、薄かった。

「え、姉御もやるんじゃねぇの?」
「やーですよ。
 嫌いなんですよね、そういう夕陽に向かって走る的なノリって」
「ね、寝ぼけるんじゃねえよ。飯も作れて盗みもできる。
 ピッキングも得意だ。そんな人材、他に居るかよ?」
「凄く嬉しくないです…」

誉めたつもりの言葉とは逆に、皮肉抜きでリラのやる気はそげていく。

「兎も角やりませんから。他を当たって下さいな。」

ぷいと背を向け、櫂を取る彼女を、チューヅは手足をうなだらせて眺めていた。
遠ざかる傘の船は小さく、もう手の届かない水面を漕いでいった。

「/thunder!」

間もなくして遠くの水面から、壊れた傘が流れついてきた。













裏返っていた黒目が元の位置に戻り、彼女の覚醒を知らせる。
リラは痛む頭に羽をや、ろうとして、
羽が動かないことに気づいく。
操縦桿のようなものに、縛り付けられているのだ。
蜘蛛の糸はピアノ線並みに丈夫で動かない。
寝起きの頭がパニックを起こし、ガチャガチャ、
無理に体を動かそうとすると、突然、彼女のいる小部屋が揺れた。
さぞや驚いたことだろう。
眼前のガラス越しには、パノラマ大展望が広がっていたのだから。
事態が把握できず、目を点にしているうちに、
部屋に「お目覚めかね、カンボ君」と、嫌みなあの男の声が言った。

「へ?は、な、な、何事です、誰ですか此処…私は何処ですか!」
「そこね、チューがつくったボロの中なんだよ」

ボロじゃねえロボだ!とかいう雑音が聞こえてくる。
嗚呼、結局付き合わされるのか。遠く聞こえる会話に耳を傾けながら
深呼吸をひとつ。あくまでも、冷静に。

「…お手上げですね。で?私は何をやらされるんです?」
「破壊活動。」

不快感に彼女は眉をしかめた。どうせ男どもには見えないのだ。
声は変わって、チューヅが機体の説明を始めた。

「いいか、こいつは某鳥類型巨大ロボ、ジャックジョーカー。
 今度は本の通りに造ったから強ぇぞ!
 右のレバーが操作。一度押すと前進、二度目で停止。」
「酔い止めありません?」
「灰皿の上に入ってる。同じとこに茶もあるから飲めな。
 左のレバーは攻撃用だ。赤ボタンでロックオンして、青で撃て。」

口だけで錠剤を取り出してから、手元のおさらいをする。
レバー二本で本当に動くのだろうか。レトロだ。

「右で操縦、左で攻撃、ですね。で?」
「健闘を祈るぜ。」
「ふむふむ…え、待っ…

心構えもできないうちに、evictで転送された。