06. vs チュータツ
「ボロたって本当にボロなんですから仕方ありませんやね。」
「ロボだっつってんだろ!変な覚え方しやがって、ほんっとてめーは…ん?」
さっきから感じていた違和感が空気のように立ちあらわれて
その気配が再度スルーされてしまう前に
はっとチューヅが振り向けば、そこには流浪のカンボジャク。
地べたに正座して、さも当然のようにリンゴの皮を剥いている。
「んなっ…!姐御、いつから居たんだっ!」
「そこの坊主さんが偉そうに説教垂れはじめたあたりからですよ。
泊まった先の子供からやたら毒飴さんに勝った話をしろとせがまれるんで
尋ねに来たんですが、そういうことだったんですね。」
くるんと首を回転させると、くし型にしたリンゴを口に放り込む。
しゃきしゃきと美味しそうな音にスラバヤが気を取られていると
その間に体制を立て直したチュータツが
「問題外だ。こうも易々と部外者が入ってくるようなずさんな組織に
えんま君を任せるわけにはいきません。木偶、帰るぞ。」
言い放って、えんまの腕をぐいと掴む。
えんまの家はそもそもスラバヤなのだが、早く切り上げたいチュータツには通じない。
ぼやぼや引っ張られるに任せるえんまの反対側の腕に
今度はドルテがしがみつく。
「but、スラバヤはベリーストロングから、良いと思うノ!」
「笑わせるな。強いとは初耳ですが!」
わかりやすいが、説得力がない。
感情に任せたドルテの言を、
チュータツは一蹴し、ここぞとばかりに反撃する。
「いいですか、先日も腹に穴開けて、こいつは危うく死ぬところだ。
このえんま君が、だぞ!貴様らの腕白は一々目に余るのだ!」
力任せに引っ張ったのは服の裾だ。
その布の下には、
毒飴で暴れたのを肋骨2本で償った跡が、
アティスにトライデントで串刺しされた傷が、
今も治りかけの熱を持った状態で疼いている。
大型リヴリーでなければ命にも関わる大怪我だったわけで、
それはともかく、腹に穴が開いたえんまを引っ張って良いのだろうか。
彼は痛がっているわけではないが、
心配性をなだめようとするように恥ずかしそうにチュータツを見ている。
「ちょっと凶厄さんにフルボッコされただけじゃない。
なめとけばなおっちゃうよ。」
「骨折が舐めただけで治るか戯け!」
「治ゆダヨ!ドルテチャンは腕切れても生えてくゆダヨ!」
「そりゃ例外中の例外ですけどね。」
ケラケラと笑ったのはリラで、違う、と騒ぎ出したドルテから
チュータツがえんまをもぎ取った。
あーっ、とチューヅが大声を上げる。
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