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「はい、お待たせ。」
エプロンをつけた黒鋼刃が両手に丸々としたディナーを乗せて、やってきた。
ほかほかのオムライスには、キャシイと黒の好きなものばかり。
卵とピラフの間にはチーズが挟んであり、とろけてとてもおいしそうだ。
キャシィがおいしそうだと褒めると、
彼女はケチャップをチューブで持ってきて、キャシィの卵に王冠の絵を描く。
「ちょっとズレちゃった」
「じゃあアタシは、クロちゃんにニコニコマークかいてあげる」
キャシィはサラダをとりわけていたトングを置き、
しばしふたりでケチャップの絵を描くのに熱中した。
ゆがんだ王冠をようやく描き終わった後、黒鋼刃はやっと額の汗をぬぐい
水の入ったコップを軽く掲げる。
「よーしできた!それじゃあ、私たちの快挙を祝って」
「それに、黒ちゃんの勇姿も讃えなくっちゃね。カンパイ!」
カチン。グラスの縁が小気味よい音を立てる。
冷たい水に唇をつけようとしたキャシィは、ふと、目の前の友人が俯いているのに気がついた。
「黒ちゃん、どうしたの?」
「恥ずかしくって。え、ええと、さっきの話はやめましょうよ。
モンスターを見ると、つい熱くなっちゃうんです…私、怖かったでしょ」
「ううん、かぁっこよかったわよん!」
たじろぐ友人に、クスリと笑みが漏れる。
キャシイは唇をにっこり曲げて、立てた親指を突き立ててみせた。
すると意外だったのか黒鋼刃はあたふたと、どうしていいのかわからない様子で口をもごつかせた。
「…よく言われます。恥ずかしいけど。」
そして控えめに真似をして、サムズアップしてみせる。
指の腹と腹が、友達のように仲良くくっついた。
「さぁ、冷めないうちに食べちゃいましょうか」
「そうね!アタシもうおなかぺっこぺこ」
よく動いた身体は、栄養とカロリーを欲しがっている。
美味しそうな気配にほっぺたが落ちそう。
ふたりはきちんと手を合わせ
「いただきまーす!」
と、少し遅い夕食をとりはじめた。
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『ドルテ!?すごい音がしたけどどうしたんだ。ドルテ!応答してくれ!』
ところで、ティータイム公園に横たわる彼女の存在も忘れてはいけない。
放り出されたインカムから、数メートルは離れたクレーターの中心。
ドルテは大の字になってマヒから立ち直れずにいた。
確かにあの銃、大会用だけあってか殺傷能力はなかったようだが
もがれた腕は散らばるし、へそのあたりは銃口の形に丸くこげている。
そしてなにより。
「ドルテチャンもおなかしゅいたぁ~!」
『おなか?なんだって!?どうした、どうしたんだドルテーっ』
月夜に寂しくこだまする。
まだGLLでの仕事が残る彼女が、オムライスにありつける日は遠い。