トロフィーを奪え!

page: 01. 02. 03. 04. 「はい、お待たせ。」

エプロンをつけた黒鋼刃が両手に丸々としたディナーを乗せて、やってきた。
ほかほかのオムライスには、キャシイと黒の好きなものばかり。
卵とピラフの間にはチーズが挟んであり、とろけてとてもおいしそうだ。
キャシィがおいしそうだと褒めると、

彼女はケチャップをチューブで持ってきて、キャシィの卵に王冠の絵を描く。

「ちょっとズレちゃった」

「じゃあアタシは、クロちゃんにニコニコマークかいてあげる」

キャシィはサラダをとりわけていたトングを置き、
しばしふたりでケチャップの絵を描くのに熱中した。
ゆがんだ王冠をようやく描き終わった後、黒鋼刃はやっと額の汗をぬぐい
水の入ったコップを軽く掲げる。

「よーしできた!それじゃあ、私たちの快挙を祝って」

「それに、黒ちゃんの勇姿も讃えなくっちゃね。カンパイ!」

カチン。グラスの縁が小気味よい音を立てる。
冷たい水に唇をつけようとしたキャシィは、ふと、目の前の友人が俯いているのに気がついた。

「黒ちゃん、どうしたの?」

「恥ずかしくって。え、ええと、さっきの話はやめましょうよ。
 モンスターを見ると、つい熱くなっちゃうんです…私、怖かったでしょ」

「ううん、かぁっこよかったわよん!」

たじろぐ友人に、クスリと笑みが漏れる。
キャシイは唇をにっこり曲げて、立てた親指を突き立ててみせた。
すると意外だったのか黒鋼刃はあたふたと、どうしていいのかわからない様子で口をもごつかせた。

「…よく言われます。恥ずかしいけど。」

そして控えめに真似をして、サムズアップしてみせる。
指の腹と腹が、友達のように仲良くくっついた。

「さぁ、冷めないうちに食べちゃいましょうか」

「そうね!アタシもうおなかぺっこぺこ」

よく動いた身体は、栄養とカロリーを欲しがっている。
美味しそうな気配にほっぺたが落ちそう。
ふたりはきちんと手を合わせ

「いただきまーす!」

と、少し遅い夕食をとりはじめた。







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『ドルテ!?すごい音がしたけどどうしたんだ。ドルテ!応答してくれ!』

ところで、ティータイム公園に横たわる彼女の存在も忘れてはいけない。
放り出されたインカムから、数メートルは離れたクレーターの中心。
ドルテは大の字になってマヒから立ち直れずにいた。
確かにあの銃、大会用だけあってか殺傷能力はなかったようだが
もがれた腕は散らばるし、へそのあたりは銃口の形に丸くこげている。
そしてなにより。

「ドルテチャンもおなかしゅいたぁ~!」

『おなか?なんだって!?どうした、どうしたんだドルテーっ』

月夜に寂しくこだまする。
まだGLLでの仕事が残る彼女が、オムライスにありつける日は遠い。