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びゅん、と風を切る音が耳元にする。
切れた髪がはらりと落ちる。あれから彼女はひたすらジャブだ。
それでも黒鋼刃は防戦一方にならざるを得ない。
動きとの間には、ラグが生じ続けていた。
が、もとより、大銃の重さを背負ってキャシィに追いつくつもりはないから
片腕が使えないハンディを背負ってもまだ手放さなかった。
この武器の特性はただ一発当てること。一発当てれば勝負は決まる。
「、らぁッ!!」
この戦いが瞬殺で終わらなかったのは、
黒鋼刃のスタイルの相性が良かったからの一言に尽きるだろう。
純粋な破壊力ではおそらくキャシィに負けるだろうが、
スピードには小刻みなジャンプが有効だし、強い握力で掴むほうでも分をあげられる。
単調な動きの中で見えてきたのは
ひとつには、キャシィが大きく動く直前に両腕を後ろに振る癖があること。
恐ろしいのは、その後どこに行くかの予測がつかないことだ。
レールガンは一度発射するとチャージにはかなり時間がかかるが
込められているのは、ローズウッドでさえも麻痺させることのできるエネルギー弾。
慎重に狙えば、どんな相手でも勝機は来る。
弾を射出するタイミングが来るまで、大銃は鈍器として有用になるだろう。
それに鉄の壁は攻撃を防ぐのにうってつけの防御にもなる。
ひたすら重いのは、それなりに難点ではあるが。
キャシイの動きに変化が見える。掌にあえて受けさせようとしたのは、受けてから見てとれた。
黒鋼刃はそれを受けながら、自身も足技で隙を作ろうと試みるのだが
キャシィはコマのように、間の開かない攻撃で守り続けるタイプだ。なかなか簡単にはいかない。
そして、斜め上に唐突な肘。
今の一瞬は確実に当てる算段だったらしい、パキケの少女の端正な目が、悔しそうに歪められる。
彼女の眼は、蒼くてとてもきれいだと思いながら、その眼に向けてレモン汁を発射する。
それは伏せた顔によって狙いを外れ、
そして二度目の隙を狙ってか、キャシィの体が至近距離で、舞った。
細い足首が目の前をゆっくり横切っていく。黒はなんだか変な気になりながら、
それを手にとった。直後、指先からじわりとチャンスを掴んだ気配が駆け上ってくる。
派手な技を好むのこそが彼女の弱点だ。
ラッキーを手放さないように
銃でクロスするように押さえ込みながら振り回し、壁に叩きつける。