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それぞれのコーナーに立つと、それだけで空気が引き締まった。
「どうぉ?決心ついた?」
キャシィは50分の休憩の間に着替えをしてきたようで
初戦と同じ、かわいらしい薄黄のドレスに身を包んでいる。
柔らかなラインを持った二の腕をジョーゼットの袖が覆い、最終予選まで勝ち抜いた実力を隠していた。
昨日、答えられなかった問い。
戦うのが好きかと尋ねられ、答えられないにも関わらず、黒鋼刃は義務であるかのように戦うことを止めなかった。
日頃はモンスターを相手に、そして今はリヴリーを餌食に。
黒鋼刃は対戦相手を、いや、友人を
静かな目で見据える。
「…戦うことを、私が好きかどうかはわかりません。
しかし、私の体は戦いを望んでいます。それだけです。」
彼女の右手には、普段使っているものよりふたまわりも大ぶりな銃が握られていた。
それは銃というよりも手持ち式の発射装置のように見えた。
装填されているものは角ばった筒に包まれ、銃身といっしょに黒鋼刃の黒ずくめと同化している。
ほとんど鈍器にしか見えないそれを肩の高さまで持ち上げてみせると、
観客席からどよめきが上がった。
「これが私の全力です。貴女も勿論」
「いいわね。」
獲物を構えた黒鋼刃を、キャシィは瞳を輝かせて見つめていた。
あたかもパフェやキャンディを食べるかのように、彼女は戦いを摂取する。
「そう言ってくれるのを待ってたわぁん!!」
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赤コーナー:
キャシィ=キャロライン パキケ
身長:167cm 体重:49kg
vs
青コーナー:
黒鋼刃 プリミティブブラックドッグ
身長175cm 体重70kg
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慎重な黒鋼刃と反対に、キャシィは強気の姿勢で仕掛けてきた。
目まぐるしく繰り出されるパンチを銃身を盾に守りながら、後ろに下がる。
規則正しかったリズムがふいに崩れ、彼女の拳を防御圏外に視認して、やむを得ず上腕を伸ばす。
「い゛…っっ」
その一撃は、ビキ、と得体の知れない音を伴って腕全体に響いた。
キャシィが体力だけで優勝へと昇り詰めていく様子の一部始終を黒鋼刃は見ていたが
彼女の威力は見た目をはるかに超えている。
自分のパンチが左手に効いたのを感じてか、キャシィは同じ位置を壊しにかかる。
黒鋼刃は足首の力を抜いてバランスを崩し、軽く退くと
渾身のパンチを確実に大銃で受け止めた。
さすがのキャシィも鋼鉄を破るほどのパワーは持っていない。
黒鋼刃は痛みにつんのめるキャシィから鉄の塊をひっぺがすと、
彼女の背中に向けて、まっすぐ上からたたきつけた。