16. in ロイヤルフェニックス

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数多ある島の一角に、巨大な金属製のムシチョウはいびつな形で舞い降りた。島主が肝を冷やして逃げ出すのを尻目にそれはかくんと首を折り、機能を停止する。中では緋夜輝が、コンソールを両断していた。

「……あのボタンは何やったん」

鎌を握ったまま、彼はつぶやく。目の前では機械の箱が、複雑怪奇な中身を露出しながら火花を散らして耳障りな断末魔を上げていた。緋夜輝の頭には、素人にもラクラク操作できる親切設計の着陸ボタンのことがよぎっていた。マニュアルとオートの切り替えだという赤い、大きなボタン。そしてその後に振動をもたらした、二度目の切り替えの時には使用しなかった青い、謎の、ボタン。

「マニュアルに切り替える言うて押さした赤のボタンあったやろあの後に使った青いボタンは何やった言うてみ!」

怒り任せに引き抜いた鎌の柄で、彼は金属の壁を引っ叩く。
城門前から逃げてくるとき、ジャスタスはわざと緋夜輝の名を呼んだ。あたかも自分の仲間であるかのように。マイクはついていたから、少なくともGLLの監視員には聞こえただろう。そして誤解を生んだだろう。これから起こる騒動の首謀者は、ほかならぬ“緋夜輝”という名のリヴリーだと。

室内に鈍い残響が響いている。コンソールの裂け目の少し上に必死で避難している体長30cmになったピグミークローンは肩で荒い息を抑えながらもなんとか平静を保とうとしているらしかった。彼と同じく、緋夜輝もまた、かなり焦っていた。

最初にオートパイロットに切り替えたとき、振動があった。確かにあの時、機体に何らかの変化があったはずである。
緋夜輝は鎌の緊張を保ったまま、ぐるりを見渡してみた。彼が物音をたてて近づいたとき、ジャスタスは真っ先に積み荷のほうを振り向いた。そこで何らかの動作が起きることを想定していたのかもしれない。

「……ほぉう」

案の定、そこにあったはずの積み荷が減っていた。機体の傾きに合わせてずれたハッチの扉の鍵が外れている。うまく機体を傾かせることができれば、飛行中、彼はいつでもその積み荷を落とすことができた。怪物の森とGLLの隙間、城壁と魔法のバリヤの隙間めがけて。