03. vsボーイソプラノ

page: 01.02.03. 04.
「返事…考えて、くれました?」

デンジャラースは驚いた。
シーツの海から体を起こすと、
13歳くらいの見知らぬピグミークローンがそこに居たのだ。


膝に腰掛け、首に腕をまわす。
艶やかな黒髪を短く切りそろえた美しい少年だ。
鈍色のスラックスと包帯の他は何も身に纏っていない。
まるで古いカメラに写したかのようにモノクロな景色の中で、
彼の目だけがワインを湛えたように赤い。

「アナタは…」

デンジャラースが言いかけると、
少年は唇に指をあてがい、問いを遮った。

「覚えてないんですね、昨晩のこと。」

昨晩?

「あれの所為かも。」

デンジャラースははっとしてベッドサイドには小さな薬瓶が置かれている。
何も覚えていないのはまさか…
思わず乙女っぽくときめいてしまうデンジャラースに、
少年はくっと目を細めた。
菜乃葉のような純朴さはないが、不健全で毒のある妖艶さ。
くるくると、デンジャラースの豊かな金髪が指に巻き付けられては、
ほどかれていくのが、妙に鮮やかに見える。

「僕を援助して欲しい。そういう話をしました。
 どうかなあ、と思って…
 あなたに匿ってもらえなければ、
 僕は引き渡し所に行くしかないものだから。
 飼い主も、もう僕を愛する気は無いようですし。
 でもあなただってこんな…こんな穢れた体の僕のことなんて…」

憂いを帯びて顔を俯けた彼を、
思わずデンジャラースは抱きしめた。
雪のように真っ白な肢体は、乱暴に扱えば溶けてしまいそうだ。

「覚悟はできていマスね…?」
「うん…だから早く…」

耳元にそっと口を寄せて。

「お願い…お父さん?」









「ねぇお父さん、早く僕に……振り込んで欲しいな!」