03. vsボーイソプラノ
「返事…考えて、くれました?」
デンジャラースは驚いた。
シーツの海から体を起こすと、
13歳くらいの見知らぬピグミークローンがそこに居たのだ。
膝に腰掛け、首に腕をまわす。
艶やかな黒髪を短く切りそろえた美しい少年だ。
鈍色のスラックスと包帯の他は何も身に纏っていない。
まるで古いカメラに写したかのようにモノクロな景色の中で、
彼の目だけがワインを湛えたように赤い。
「アナタは…」
デンジャラースが言いかけると、
少年は唇に指をあてがい、問いを遮った。
「覚えてないんですね、昨晩のこと。」
昨晩?
「あれの所為かも。」
デンジャラースははっとしてベッドサイドには小さな薬瓶が置かれている。
何も覚えていないのはまさか…
思わず乙女っぽくときめいてしまうデンジャラースに、
少年はくっと目を細めた。
菜乃葉のような純朴さはないが、不健全で毒のある妖艶さ。
くるくると、デンジャラースの豊かな金髪が指に巻き付けられては、
ほどかれていくのが、妙に鮮やかに見える。
「僕を援助して欲しい。そういう話をしました。
どうかなあ、と思って…
あなたに匿ってもらえなければ、
僕は引き渡し所に行くしかないものだから。
飼い主も、もう僕を愛する気は無いようですし。
でもあなただってこんな…こんな穢れた体の僕のことなんて…」
憂いを帯びて顔を俯けた彼を、
思わずデンジャラースは抱きしめた。
雪のように真っ白な肢体は、乱暴に扱えば溶けてしまいそうだ。
「覚悟はできていマスね…?」
「うん…だから早く…」
耳元にそっと口を寄せて。
「お願い…お父さん?」
「ねぇお父さん、早く僕に……振り込んで欲しいな!」
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