ギュニア杯初日午前:えんま vs ソンフィ

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「まいったなあ。はやくおわらせないといけないの…にっ!」

体当たりするように風の壁を破り、自由になったえんまは
遠ざかったソンフィを捕まえようと突撃を試みた。
だが、素早さではソンフィのほうが数段上だ。第一、余計なことを悟らせてしまう。

「遠距離戦が嫌いか…望むところだ!」

体を伏せて突進を避けると、背後に回って銃を突き付ける。
振り向く前に撃ったのは炎弾。
fireを纏った球がえんまの背中で燃えだし、深くまで突き刺さって肉を焼く。

「そんなこと…っないもんね!/hammer!」

負けじとえんまも木槌を召喚する。
元の魔法力がそんなにないためか、大きさには欠けるが、
その分を本人の威力でカバーしている。

「てぇいっ!」

ソンフィは翼を大きく広げ、舞うようにして避けた。
さらに逃げられたあとで遠くから弾を撃たれる。
今度は雷弾を3発。
命中した箇所から溢れた電流がえんまの動きを止める。
ハンマーを手から取り落し、がくんと膝を付く。

「くはは!遠慮すんなよ。
 降参してもいいんだぜ?」

はためくとソンフィの体はふわりと高く浮かぶ。
脳天を狙えば勝てると踏んだのだろう。
止めを差しに掛かる。
十分に高度を上げたところで翼を畳み、一気に落下しながら、撃つ。
いける。
彼女が思った矢先、えんまが転がってハンマーを掴み、
真上に向かって振りかざした。

「うりゃあっ!」

撃ち落とされたソンフィがその真横に叩きつけられる。

「っ、やべ…!」

頭だ。頭に当たった。
ぼたぼたと零れおちる何かにソンフィがめまいを覚えていると、
彼女の背後で影が動く。
地面に手を突いて立ち上がろうとすると、
突然体を襲った圧力に息が止まった。

「こおさんしないの…?」

えんまが荒い息を吐きながら、ソンフィのわき腹に両手を踏んで押さえている。
彼も疲労の色が濃い。
えんまの体は穴だらけ、また距離をとられたらおしまいだろう。
ここで攻めなければ、最後だ。

「…してよ…」

その和やかな声音からは全く不釣り合いに、
骨の軋みはゴリゴリと潰れる音に変わっていった。
全ての感覚が麻痺してしまったようで、悲鳴すら上げられないらしい。
ソンフィはがくんがくんと不規則に体を震わせながら痛みに耐えている。
ろっ骨がめき、と悲鳴を上げた。

「ほら、こ・う・さ・んってさ。」

抑える手にゆっくり体重をかけて、えんまが言う。
乾いた音がして、どこかの骨がとうとう割れたようだった。

「降参…て」

誰がするかあああああっ…!!
痛みに反り返り、叫び声と共に彼女は吠えた。